研究概要 |
平成l1年度は、C_5Me_5とER(E=0,S,NR')を有する混合配位子型二価ランタノイド錯体の合成および触媒活性についての検討を行った。これまでの研究により、C_5Me_5とOar(Ar=C_6H_2-tBu_2-2,6-Me-4)を同時に持つ混合配位子型二価ランタノイド錯体1がスチレン、エチレンの重合反応に対し高い触媒活性を示すこと、さらにはエチレンとスチレシの共存下一段階でブロック共重合体を与えることが明らかになっている。この共重合体の生成は従来の触媒では見られなかった特徴的な反応性である。この重合系においてはOar配位子が反応性に対して重要な影響を与えているものと推察されることから、その効果を明らかにするために他のアニオン配位子の導入を行い、重合の挙動について比較検討した。アニオン配位子としてOC_6H_3-iPr_2-2,6(2)、SC_6H_2-iPr_3-2,4,6(3)、NHC_6H_2-tBu_3-2,4,6(4)、N(SiMe_3) _2(5)を有する錯体をそれぞれ合成した。各錯体についてはX線結晶構造解析、NMRスペクトルによりその構造を決定した。これらの錯体を触媒に用いてエチレンおよびスチレンの重合、共重合にっいて検討した。スチレンの重合に対してはいずれの錯体も常温常圧条件下で高い活性を示した。また、エチレン重合に対しても各錯体とも活性であったが、アミド配位子を有する4および5は他の錯体に比べて収率が若干低い傾向が見られた。得られたポリエチレンは比較的分子量分布が狭くかつ高分子量であり、特にアミド配位子を有する5ではMn>300万の超高分子量のポリエチレンが生成した。さらにエチレン・スチレンの共重合の検討を行った結果、錯体2が最もポリスチレン含有率の高い共重合体を与えること、錯体3が最も選択性よくブロック共重合体を与えることがわかった。このように、アニオン配位子の立体的・電子的効果が触媒活性および重合挙動に対して大きな影響を与えることが明らかになった。
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