高感度熱量計(東京理工製)に超高真空システムを接続し、固体試料への分子吸着に伴う熱の発生を精密測定できる系の開発を行った。今年度で実験装置の組み立てはほぼ終了し、現在は標準試料を用いて装置の詳細なセッティングを行っている。現在までに、分子篩性の炭素材料を用いて、常温での窒素吸着の測定を行った。ある分子篩炭素は窒素分子に対して、通常の物理吸着に加えて強い吸着サイトを有していることを見出した.これは従来の物理吸着だけでは説明のつかない特異な吸着現象であり、またこの特異な吸着サイトがナノスペースとしての新たなる機能性を有していることが予想される。分子シミュレーションを用いて、物理吸着現象を再現することは、ほぼ技術的に完成されている。一方、今回見出されたような特異な吸着サイトのポテンシャルを解明するためにはより詳細なナノカロリメトリー解析を行い、熱力学的データを分子レベルで解明していく必要がある。現在、分子シミュレーションによって、窒素分子を1中心球形近似した単純なモデルでのプログラムはほぼ完成した。さらに、固体表面での特異的ポテンシャルを想定したプログラムを開発し、ナノカロリメトリー解析の実験結果との比較が可能となりつつある。
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