(1)典型的な液晶性物質、アルコキシシアノビフェニル系列(nOCB)とアルキルシアノビフェニル(nCB)系列の結晶構造の系統的な比較を行った。前者では、鎖長が長くなると、シアノ基同士の相互作用が優勢となるが、後者では、鎖長nが偶数の場合は、シアノ基同士、奇数の場合はシアノ基とフェニル基の相互作用が働く顕著な偶奇効果を見いだした。赤外分光法を用い、CN伸縮振動が、nOCB系列がnCB系列より希薄溶液では、0.5cm^<-1>、液晶相では、1.0cm^<-1>低波数側に現れることを見いだした。溶液での差は主として分子内相互作用の差であり、液晶相での差はさらに分子間相互作用の差を表している。その起源として、層厚の測定よりコアの重なりが3Åほど、nOCBがnCBより大きいことが分かった。同様の結果は、シアノエステルの2つの異性体系列でも得られた。 (2)融点や透明点に顕著な偶奇効果を示す2つの系列のダイマー型液晶物質(アルキル型、エステル型)の結晶構造を解析した液晶相発現部位をつなぐアルキル鎖が奇数の場合に折れ曲がった分子が互い違いにうねって配列し、偶数の場合には伸びた分子が平行配列していることを明らかにしたが、これらの結果は融点や透明点の顕著な偶奇効果とよい対応を示す。 (3)キラル認識により特異な等方性液晶相が発現するジフェニルピリミジン液晶物質および等方性液晶相を発現しない構造異性体の比較を始め、類縁物質の系統的な結晶構造比較より、分子構造と、結晶におけるパッキングから分子間相互作用に関する知見を引き出し、液晶挙動との関連を検討した。
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