ペリレン顔料の溶液スペクトルはペリレン骨格に結合する置換基によらず、ほぼ同じ吸収スペクトルを示すが、固体状態では分子間の相互作用により赤、すみれ、栗色、黒と様々な色を呈する。特に色が深くなると分子間の相互作用が強くサーモクロミズムを示すものが多いことがこれまでの我々の研究で判ってきた。本年度は黒色の顔料の分子配列と吸収スペクトルの相関関係を明らかにする目的で、ダイヤモンドアンビルセルを用いて試料に静水圧をかけ、分子配列と色変化の関係を検討した。しかし、分子配列の分断には静水圧より剪断力の方が勝れていることが判った。剪断力の方法で分子の配列を乱すと黒色のペリレンは直ちに赤色となり、これに伴いは結晶状態から非晶質の状態に移ることも明らかとなった。更に、黒色ペリレンは大きなサーモクロミズムを示し、温度ともに分子配列が変化し4元系半導体レーザー(GaInPA1)の発振波長(635nm)で吸収バンドのスイッチングが観測された。上記のメカニズムを再確認する目的から、今度はキシリル型の赤色ペリレンで発色メカニズムを結晶構造、サーモクロミズムの立場から基礎的に検討した。キシリルペリレンの単結晶を気相から育成し、X線構造解析を行なった。その結果P2_1/nの空間群で結晶化し、偏光反射スペクトルならびに吸収スペクトルの温度変化から、キシリルペリレンの分子間相互作用は黒色ペリレンに比べて格段に小さいことが明らかになった。以上より、大きなサーモクロミズムを示し、光ディスクに応用できそうなペリレン顔料は黒色系が有力であり、今後この系統の誘導体を検討していく方針を立てた。
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