●弾性線維蛋白質-水系の温度依存性コアセルベーション (1)疎水性相互作用と静電的相互作用:弾性線維蛋白質の自己組織化の駆動力 温度上昇による、基本的に疎水性相互作用に支配される弾性線維蛋白質-水系のコアセルベート形成は、非臨界領域では反対荷電間の集合体を収縮させる二次的静電的作用の寄与が明らかとなった。一方、ウシ血清アルブミンとカチオン性高分子電解質間のコアセルベート形成は、典型的な静電相互作用に基づく例で、温度の影響を全く受けなかった (2)流動場に於ける弾性線維蛋白質-水系の温度依存性コアセルベーション:生体内環境の再現 弾性線維蛋白質-水系のコアセルベート形成は、温度、pH、共存金属イオンによる蛋白質-蛋白質分子間相互作用、蛋白質-水分子間相互作用への様々な影響を受けるが、専断応力の影響については、細胞間隙で進行する前駆蛋白質トロポエラスチンの生体内自己組織化過程の詳細を知る上からも重要である。 ●生体機能性弾性材料創製への展開 (1)球状自己組織体と紐状自己組織体:流動場に於ける弾性線維蛋白質の自己集合組織化との関連 弾性線維蛋白質-水系の温度依存性コアセルベーションの結果、一般的な球状自己組織体と共に紐状自己組織体が形成される。紐状コアセルベートは流動場に於ける相挙動に密接に関連しており、生体内での最終的な弾性線維形成とも密接に関連している可能性があり、生体弾性材料創製に対しても重要な知見となる。 (2)金属イオン選択特異性と弾性線維蛋白質の構造形成と機能発現 弾性線維蛋白質上には陽イオン結合部位として、非特異的なアミノ酸側鎖カルボキシ酸素と選択特異的なペプチド骨格カルボニル酸素が存在する。繰返しペンタペプチド骨格部位へのカルシュウム及びランタンイオンの選択特異的結合は、弾性機能発現に重要なβスパイラル構造の崩壊や動脈硬化の進行や回復に密接に関連している。
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