研究概要 |
我々は以前に融体からの結晶成長の分子動力学シミュレーション(MD)を世界で最初に行い、その分子レベルでの機構解析に成功した。今回科研費で購入できたワークステーションを用いて、以前は大型計算機で行っていた計算をより短い時間で行うことができた。主な成果は以下のとおりである。 1.NaClは最初の基板が(110)面でも[100]方向に成長する。これは陽-陰イオンが互いに隣り合う(100)面が、融液の構造と似ているために、結晶成長が容易なためと思われる。 2.成長速度の温度依存性を調べたら、850K(融点の実験値は1073K)付近で極大値を有することが分かった。 3.NaCl融体のNa^+の約12%を、Li^+,K^+,Rb^+のいずれかで置き換えたもの、あるいはCl^-を同様にF^-,Br^-で置き換えた"不純物系"の結晶成長を行ったら、融液中の陽-陰イオン間の距離が結晶中のNa^+-Cl^-の距離に近いものほど成長速度が速いことが分かった。 4.NaCl基板の上にLiCl融体を結晶させる"エピタキシー "のMDでは、LiClが結晶成長し、少なくても5層程度にわたって、成長方向のLi^+-Cl^-は、本来の長さを有し、基板方向にはNa^+-Cl^-の長さを有した。 5.ルチル構造を有するCaCl_2を2価-1価の代表として選び、同様な結晶成長のMDを行ったら結晶は[001]方向に成長した。成長速度はNaClの場合に比べて約1/100程度であった。現在、他の融液系や水溶液系に拡張している。 成果は、すでに国内の学会で2度、国際学会ではこれまで1度、2000年に3度発表する予定である。
|