研究概要 |
我々は,融体からの結晶成長の分子動力学シミュレーション(MD)による研究を始めていた。我々が知る限りでは,世界で最初のものであった。近年,計算機環境の発展のお陰で,この種の計算は,以前には,大変であったものが,より行い易くなり,前年度に本科研費によりワークステーションを購入して,その研究を発展させることができた。今年度は,備品類の購入はなく,実際の計算に勢力を費やしてきた。 1.MgOは,エレクトロニクスの基板材料としても使われる有用な結晶体でNaCl型を有する。結晶界面が(100)面,(110)面,(111)面について,融体からの結晶成長のMDを行った。このうち,(100)面の成長が最も速く,温度の関数として速度を見ると,ある温度で最大値を記録した(90ms^<-1>)。表面が,最初(110)面であった場合でも,<100>方向に成長ずることが,分かった。また,(111)面の場合は,最初,<111>方向に成長するが,欠陥が多く,真空に接する結晶表面では,三角錐状になり,{100}面が現れることが分かった。この結果の論文は,J.Mol.Liq.に現在投稿中である。 2.KClは,NaCl型を有し,NaClとの対比で興味深いが,この融体からの結晶成長を,(100),(110),(111)面について調べた結果,(100)面上に最も成長しやすいことが分かった。これは,実験による予想一致する。
|