研究概要 |
1.α-Et_2Me_2N[Ni(dmit)_2]_2の相転移に対する圧力効果 α-Et_2Me_2N[Ni(dmit)_2]_2の電気抵抗は室温から低温まで金属的な挙動を示すが、250Kでとびが観測される。これは、ET_2Me_2N^+のorder-disorder転移によりクラックが結晶に生じることによるもので、相転移温度は加圧により250Kから室温まで上昇する。高圧下での電気抵抗の測定から作成した相図を昨年度報告した。今年度は、圧力下の磁化率を測定するために、SQUID磁束計用のφ7mmの圧力セルを設計、製作した。磁化率には250Kに相転移が観測されるので、今後、高圧下の磁化率を測定し、電気抵抗の結果と合わせて相図を決定する予定である。また、良質の単結晶を得る条件を検討したところ、不活性雰囲気下での電解合成が重要であった。そこで、ガス置換のためのコックをつけた同軸型ガラスセルを設計、製作した。また、通常の電解合成法ではl0日間ほど定電流を流し続けるが、極少量の結晶の生成した約4日後に電流を止めることで良質の結晶が得られることを確認した。 2.2,6-pyridine-bis(nitronyl nitroxide)とZn, Cu錯体 ピリジン環をもつビラジカル2,6-pyridine-bis(nitronyl nitroxide)を合成し、磁性を調べた。磁化率χ_pTは、温度を上げるに従って10K付近で停留点を示した後、徐々に上昇し380Kでも0.70emuKmol^<-1>であり、通常のビラジカルに高温で期待される0.75emuKmol^<-1>に達しない。これは、かなり大きな反強磁性相互作用が働いていることを示している。また、このビラジカルと磁性イオンCuCl_2または、非磁性イオンZnCl_2を配位させた錯体の合成を試みた。粉末試料の合成には成功したが、量が少なく、純度に問題があるので、今後、合成と再結晶の方法を検討し、純度の高い試料、さらに単結晶を作成し、磁化測定と構造解析を行い、磁性の起源を解明する。
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