平成11年度において、目標としていたフッ素化フェニレンデンドリマーの合成に成功し、素子としての初期評価を完了することができた。2つのフッ化フェニレンデンドリマーC60F42(分子量:1518)およびC132F90(分子量:3295)は臭素化反応とクロスカップリングの繰返しにより合成された。構造と性質の関係を知るために、p-terphenylとp-quaterpheylを含む二つのC60F42異性体の合成も同時に行った。これらの化合物は無色の固体で、トルエンやクロロフォルム等に溶解する。3つのC60F42はガラス転移を125-135度で示した。デンドリマーC132F90は426度で融解し、ガラス転移は示さなかった。有機EL素子を高真空下、ITO基板上にTPTEをホール輸送層、Alq3を発光層、フッ化フェニレンを電子輸送層、LiFを電子注入層、アルミニウムを陰極として蒸着した。最高輝度は、24.4Vで2860cd/m2であった。還元電位の測定によると、フッ化フェニレンの電子親和度が増加するほど素子としての性能が向上することがわかった。従来このような相関は認められておらず、分子設計の上で大きな指針となる。これに従い、最近6個のベンゼン環がパラ共役したperfIuoro-p-sexyphenylを合成し素子の評価を行った。最高輝度は13.7Vで12200cd/m2に達し、その性能が劇的に向上することがわかった。現在最もよく使用されているAlq3にほぼ匹敵し、今後これを超える誘導体が出てくる可能性が高い。
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