研究概要 |
平成11年度に、鎖長1.5〜2.5nmの合成ブロックから5〜10nm長の分子ワイヤの逐次合成に成功したが、溶解度的には限界が近いものであった。そこで、より大型かつ高溶解性の合成ブロックの開発を試みた結果、形状の著しく異なる置換基を複数個導入した場合、高い溶解性を確保できることが分かった。この戦術により、鎖長4.5nmまでの高溶解性の合成ブロックを新規開発した。 しかし、昨年来の多端針型ナノ計測法の進展を考慮すると、今後の単分子機能の検証実験は10nm前後のサイズ領域で行われることが予想されたので、数十nm級の分子構築については保留し、10nm級分子の高次機能集積化を先に進めることにした。代表的な分子鎖合成ブロックについて、一般性のある機能性側鎖導入法を検討した結果、3,4-ジアミノチオフェンユニットとカルボン酸とを反応させる「Phillipsイミダゾール合成」の活用が最も有望であることが分かった。この反応ルートを用いることにより、各種の共役型/非共役型の側鎖を共役主鎖に直交する形で導入することができた。カルボキシル基を有する分子には多種多様なモノがあることから、本法により分子鎖間相互作用や分子内共平面性の調整、イミダゾール環の酸塩基/酸化還元系を利用した共役主鎖の電子構造の制御、溶解性の向上等が幅広く行えることになる。また、ジカルボン酸を利用すればラダー化が可能であるが、現在のところ収率は悪く反応条件の最適化を継続中である。 基板表面の孤立単一分子のSTM計測、及び観測像の厳密な解釈は現時点においても容易ではない。そこで、大型単一分子の伝導度計測実験に先だって、その各構成ブロックのSTM観測を行った。その結果、鎖状側鎖と立体的に嵩高い側鎖が共存した分子において、自己組織化により網の目型のナノスケール構造体を形成することを見いだした。現在、その一般化を検討している。
|