研究概要 |
対称ジオールの不斉アシル化による非対称化は、その方法論の興味深さとともに高い選択性でモノアシル化生成物が得られる場合には、有用な生理活性物質のキラル合成素子の構築に利用することができる。そこで、モレキュラーシーブス(MS 4A)と、ジオールに対して0.5mol%の(S)-プロリンから誘導されるキラルな1,2-ジアミンと、1.7当量のトリエチルアミンの存在下、シス-2-シクロペンテン-1,4-ジオールに1.7当量の塩化ベンゾイルを-78℃で反応させて不斉アシル化を行った。その結果、対応するモノ安息香酸エステルが化学収率37%、光学収率98%eeで得られた。さらに、二つのヒドロキシ基の間の炭素原子が第四級となったシス-5,5-ジメチル-2-シクロペンテン-1,4-ジオールの非対称化は99.5%ee以上の選択性で進行することを見い出した。こうして得られた非対称化合物は残ったヒドロキシ基を酸化することにより、プロスタグランジン類の汎用性の高いキラル合成素子である4-アシルオキシ-2-シクロペンテン-1-オンに簡便に変換することができた。 次に、この非酵素型触媒的不斉アシル化を対称1,3-ジオールの触媒的非対称化に展開した。その結果、二つのヒドロキシ基が遠く離れ、不斉誘導がより困難と考えられる対称1,3-ジオールに対してもわずか0.5mol%の触媒を用いるだけで、高選択的でしかも超高効率に不斉アシル化が進行し、非対称化が実現できることを明らかにした。現在、さらに遠隔対称ジオールとなる1,4-ジオールの触媒的不斉アシル化の検討を行っている。
|