研究概要 |
2-メトキシカルボン酸およびα-ケト酸が五酸化二リン-メタンスルホン酸(P_2O_5-MsOH)中で脱一酸化炭素を伴うアリール化を連続して受ける非Friedel-Craftsアシル化型の親電子芳香族置換反応の挙動の厳密な把握と反応経路・機構の解明を行い,さらにα-ケト酸からの新規共役化合物群の合成反応を検討した。 「(1)脱一酸化炭素を伴うカルボン酸のアリール化における基質の構造的反応支配要因の解明」では,基質カルボン酸のα-位の官能基の形態の反応挙動への影響,芳香族化合物の置換基の電子的・立体的な影響を明かにした。また,「カルボン酸のα-位のアルキル(アリール)置換基の立体的・電子的影響の定量的評価」では,αケト酸の構造と反応挙動との関係について,脱一酸化炭素の有無とアリール化の程度を4つの型に分類して説明できることが新たに分かった(Synth.Commun.1999;J.Org.Chem.2000)。 「(2)縮合剤反応媒体中のヘテロ元素の役割の解明」では,2-メトキシプロピオン酸,メトキシ酢酸,メトキシフェニル酢酸等と芳香族化合物の反応をリン酸無水物系試剤(P_2O_5-MsOHなど),MsOH,CF_3SO_3H(TfOH),CF_3COOH,Nafion-H等の媒介体存在下で行いこの反応が酸性媒介体の性質に大きく依存することが分かった。特にメトキシ酢酸については媒介体の酸強度や性質に依存して,複数の反応経路の反応が進む特殊な挙動を示すことが分かった。その反応環境と生成物分布の相関についての系統的な解明ができた。 「(3)中間体候補化合物を用いたモデル反応による反応経路・反応機構の解明」では,2-メトキシプロパン酸を中心に詳細な実験結果の比較検討から酸無水物形成を鍵とする反応経路を示すことができた(J.Org.Chem.1999)。これを基にしたメトキシ酢酸の反応の経路解明からその反応の経路が他とは大きく異なることが分かり,基質構造,酸性媒体と酸性度(プロトン供与能力)対酸無水物形成能の観点で反応経路の支配要因を解析した。
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