平成12年度は、改良を行った分光系を用いて、実際に触媒反応の行われる温度にて吸着種の観測を試みた。しかし、これまでに主に低温での観測に用いてきた減圧の閉鎖循環系で観測をするのでは触媒反応の条件とは異なるので、高圧に耐えられるセルと流通系の設置を行った。反応ガスを高圧力にした場合、気相分子の濃度が大きくなり、それによる赤外吸収が吸着種のスペクトルを妨害することが考えられるので、試料室内を通過する光路長を極端に短くすることで最少にとどめるようにした。このため、1枚の厚いロッド状の窓板を用いたが、1MPa以下の圧力でO-ringとの接点で破壊が起り、耐圧性に乏しいことが分かったので、薄い窓板材を数枚重ね、歪みを順次逃がすことでこの問題を回避できるセルを製作している。すでに完成しているセルと流通系を用いて酸化物担持型酸化モリブデン触媒上でのメタノールの酸化反応に着いて検討を行った。この反応の場合、気相分子の赤外吸収は強くなく、触媒反応条件下で良好なスペクトルを測定することが出来た。メタノールは先ずOH結合が切断されメトキシドして担体上に存在した。定常状態ではメトキシド以外の吸着種は観測されなかったが、メタノールの供給を止め、酸素のみを流通させるとメトキシドが酸化されホルムアルデヒドが生成する様子が観測された。担体のみではメトキシドは生成するが酸化反応が進行しないことから、酸化モリブデンは酸素の活性化に大きく寄与していることが明らかとなった。また、反応生成物の分析と、表面種の分析を定量的に比較することで、ホルムアルデヒドの選択的生成反応の律速段階は、酸素の活性化であることが分かった。p
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