平成12年度までで、高温高圧条件下で反応生成物と同時に表面吸着種を観測するための流通系および小型赤外セルの作成を行い、予備的な実験として酸化物担持型酸化モリブデン触媒上でのメタノールの酸化反応について検討を行った。平成13年度は、実用触媒として既に工業的に用いられているゼオライト上での炭化水素の反応を調べるために、n-ヘプタンの異性化反応をPt担持Hβゼオライト上で行った。この反応系はガソリンのオクタン価を向上させ。改質を行うためのプロセスである。この反応で触媒開発の際問題となるのが、炭素数が7以上の炭化水素において直鎖型の化合物を分岐させる際に、異性化反応と同時にクラッキングが併発してしまうことである。このことを踏まえて、実際に活性・選択性の高い触媒と低い触媒とで比較検討を行った。反応成績の結果から、反応の活性および選択性を向上させ、副反応であるクラッキング反応を抑制するのには、Ptの担持およびH_2を共存させることが効果的であることが確認できた。活性・選択性の高い触媒と低い触媒で、定常反応中に生成する表面吸着種を観測した所、活性・選択性の低い触媒ではポリオレフィンやコ一クなどの脱水素化合物の蓄積が激しい一方、活性・選択性の高い触媒では表面吸着種は全て反応活性種であることが分かった。また、同位体を用いた実験により、活性な表面では水素(HとD)の交換が速く、定常反応条件下では平衡に達していることが分かった。以上、本研究で構築した系は、高圧・高温の実用触媒系での反応機構の観測に非常に有用であることが結論され、今後も引き続き他の触媒系に適応させていきたい。
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