触媒反応の研究において赤外分光法は、反応機構や活性点を明らかにするのに用いられている。しかし測定条件に制限があり、高温実用触媒反応の真の反応機構は推測を脱しない。そこで本研究では、まず高温触媒反応を赤外分光法で観測するための手法を確立し、それを用いてこれまでは困難であった高温触媒反応機構に関する詳細な検討を行うことを目的とした。 平成11年度においては光路系の改良を行い、平成12年度以降実際に反応の観測を行った。反応系は、1)酸化物担持型酸化モリブデン触媒上でのメタノールの酸化反応、そして2)Pt担持HBゼオライト上でのn-ヘプタンの異性化反応、を選択した。1)では、メタノールはメトキシドして担体上に存在し、酸素の流通によりメトキシドが酸化されホルムアルデヒドが生成する様子が観測されたアルデヒドは担体のみでは生成しなかったことから、酸化モリブデンは律速段階である酸素の活性化に大きく寄与していることが明らかとなった。 ガソリンの改質を行うためのプロセスである2)の反応で触媒開発の問題となるのが、異性化反応と同時にクラッキングが併発してしまうことである。このことを踏まえて、活性・選択性の高い触媒と低い触媒とで比較検討を行った。反応成績と表面観測の両結果から、反応の活性および選択性を向上させ、副反応を抑制するのには、Ptの担持およびH_2を共存させポリオレフィンやコークなどの脱水素化合物の生成を抑制することが効果的であることが確認できた。また、同位体を用いた結果、活性な表面では水素(HとD)の交換が速く、定常反応条件下では平衡に達していることが分かった。以上、本研究で構築した系は、高圧・高温の実用触媒系での反応機構の観測に非常に有用であることが結論され、今後も引き続き他系に適応させていきたい。
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