研究概要 |
超臨界流体を利用するプロセス開発が注目を集めている。本研究では超臨界アルコールが,反応場としてだけでなくReaction Partnerとしても関与する有機化学反応の探索を行った。 1.超臨界アルコールとアルケンの反応:アルケンが共役した芳香環を持つとき,アルケンのヒドロキシアルキル化と水素化が進行した。ヒドロキシアルキル化の速度はアルコールの構造(第2級>第一級)とアルケンの構造((Ph)_2C=CH_2>Ph-CH=CHPh, PhCH=CH_2>PhCH_2CH=CH_2)に依存した。ヒドロキシアルキル化では超臨界アルコールのα-水素の解離(ヒドリドまたは水素ラジカル)が律速段階になっていることが推定される。 2.超臨界メタノールとDiphenylacetyleneの反応:アルキンが共役した芳香環を持つとき,アルケンのヒドロキシアルキル化と水素化が進行した。 3.超臨界アルコールとカルボン酸の反応:超臨界第一級アルコールを用いたとき,カルボン酸のエステル化が進行した。エステル化の機構はカルボン酸の構造により異なる。1)立体障害の小さいカルボン酸ではカルボニル炭素と酸素原子間の結合の開裂を経て進行し,2)立体障害の大きいカルボン酸ではカルボキシル基の酸素-水素結合の開裂を通して進行する。 4.超臨界二酸化炭素とPyrroleの反応:超臨界アルコールのReaction Partnerとしての特異性を理解するために,超臨界二酸化炭素とPyrroleの反応について検討した。Bacillus megateriumの細胞中に含まれる脱炭酸酵素が,超臨界二酸化炭素によるPyrroleのカルボキシル化反応の触媒として働くことを見出した。
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