研究概要 |
溶液中に存在する微小場への物質供給は速やかに起こること,親水性-疎水性,吸着,イオン交換などにより微小場に溶質を濃縮できること,微小場の定量分析に分光法が有効であることに基づいて,本研究は単一ピコリットルの微小場に溶質を抽出し顕微吸光法で超微量その場分析できる手法開発を行い,抽出機構を解析することを目的とした。先ず,吸光分析用の可視プロープ光を光学顕微鏡に導入し,2〜3μmに集光できる光学系を自作した。単一微小場を透過したプローブ光をマルチチャンネル光検出器で検出し吸収測定できる装置を製作した。顕微吸収システムの性能は色素を含む油滴をゼラチンフィルムに分散して油滴のサイズと色素濃度を変化させて吸光分析が定量的に行えることを確認した。次に,単一ピコリットルの微小場への抽出-顕微吸光法の性能を調べるため,シャーレ中の溶液に単一シリカゲル微粒子を添加し,溶液中の色素が固相抽出される過程の経時変化を測定した。また,抽出平衡に達した後,色素を含まない溶液に同じ微粒子を添加し脱着する過程を観測した。ローダミン6Gは微粒子内の拡散が律速で収着・脱着するが,メチレンブルーは脱着速度が律速でこれらの過程が進むことを明らかにした。単一微粒子への固相抽出とともに,単一液滴への溶媒抽出の機構解析を顕微分光法に基づいて速度論的に行っている。今後,キレート反応等で生成した化合物が,微小場に抽出される過程を検討する。
|