研究概要 |
本研究は,溶液中に存在する微小場への物質供給は速やかに起こること,親水性-疎水性相互作用,吸着などにより微小場に溶質を濃縮できること,局所分析に顕微分析法が有効であることに基づいて,単一ピコリットルの微小場に溶質を抽出し,顕微分光・電気化学法で超微量その場分析できる手法開発を行い,抽出機構を解析することを目的とした。前年度までに開発したマイクロキャピラリー操作-顕微吸光-電気化学装置を用いて,水溶液相から微小油滴(溶媒抽出),または微粒子に抽出される(固相抽出)過程の速度論的議論を行った。微小油滴/水系においては,イオン対抽出過程を検討した。界面に吸着しない(フェロセニルメチル)トリメチルアンモニウムとPF_6^-では抽出は非常に速く,水相中の拡散速度と同程度であることがわかった。一方,アニオン性界面活性剤の典型的な定量法である,メチレンブルーとドデシル硫酸イオンについて測定したところ,抽出過程は誘導期をもった連続ステップで解析でき,ドデシル硫酸イオンの界面吸着が抽出過程において重要であることが,油滴サイズ依存性から明らかとなった。微粒子/水系においては,カチオン性色素がシリカゲルに収脱着される過程を検討した。ローダミン6Gの収脱着過程は,微粒子内拡散が律速で進むことがわかった。一方,メチレンブルー,アクリジンオレンジは微粒子内拡散と固/液界面における脱着速度が非常に遅く,これらの過程が律速になることが微粒子サイズ依存性から明らかとなった。本手法は微小液滴,微粒子の超微量分析法として,またこれらへの抽出過程を速度論的に解析できる手法として極めて有用であることを明らかにした。
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