1.高分子-水間の動的相互作用を検出する手法の確立 (1)ソリッドエコー法による10μsオーダーのT2緩和時間の計測法の確立:濃厚水溶液中の高分子鎖の運動は極めて制限されており、T2が短くなる。また、低温領域で凍結した水分子においてもT2は10μsのオーダーになる。このように短いT2緩和時間は通常のスピンエコー法では検出できない。ソリッドエコーパルスシーケンスを用いた解析法を確立した。温度コントロールと組合わせた自動計測システムとして構築した。 (2)高分解能NMR(300MHz)により、高分子鎖の遅い拡散係数計測システム、およびNMRマイクロイメージングシステムを組み合わせて遅い拡散計測システムの構築を計り最適条件を模索している。 (3)プロトン交換を伴う系のT2緩和時間および拡散係数同時解析システムの構築:パルス磁場勾配スピンエコーシーケンスのタイミングを変化することにより、T2緩和成分比を保持した状態において拡散成分比の評価を可能にした。 (4)プロトン交換を含んだ系のT2緩和の理論を数値解析するプログラムを開発し、その適応性をゾル-ゲル転移及びコイル-ヘリックス転移に適応し、転移機構の解明を行った。 2.濃厚プルラン溶液中の水について: 上記1.(1)及び1.(3)の方法により解析し、T2緩和成分を10μsオーダーの凍結水、70-100μsの高分子鎖中のinertプロトン、及び1ms以上の交換可能な高分子プロトン、水和水プロトン、自由水プロトンの熱運動平衡値を識別することが出来た。不凍水量の評価を可能にした。 3.ジェランによる2価陽イオン取りこみ: ジェランガムのゾル-ゲル転移過程におけるCu2+の特異的な挙動をESRで捕らえ、ジェランガムの超分子構造形成の要因となるCu2+の取り込み機構を解明した。 4.ゼラチン水溶液のゲル化機構をNMR緩和計測、CD及び粘弾性測定を組み合わせて解明した。
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