研究概要 |
生物体内に存在するアミノ酸はそのほとんどがL体として存在しているが,発酵や加熱等の処理によりD体へのラセミ化が進む.たとえば,チーズやヨーグルトではD体の割合はL体の数十%に及ぶことがある.また,アルツハイマーなどの患者では脳神経においてD体の分率に異常があることが報告されている.このようにアミノ酸の立体異性の認識・定量は食品,医薬等の分野において重要であるが,それらはほとんどHPLCにより行われている.申請者らはこのような現状を考え,簡易定量法としてのセンサーの開発を進める.これにより,分析時間の短縮や,その場測定,特に細胞内診断等の分野での発展が期待できる. 今年度は以下の項目について検討した. 1.金-イオウ化合物膜センサーの開発 カルボン酸を2つ持つ有機イオウ化合物を修飾した金電極表面はCu^<2+>を固定できる.従って溶液中のアミノ酸はこの表面イオウ化合物と三次元錯体を作り,膜電位を変化させる.立体異性の認識はイオウ化合物の立体構造による.また,長鎖イオウ化合物を修飾した金電極についてもMolecular Imprinting手法を応用してセンサーの開発を試みた. 2.過酸化電導性ポリマー膜センサーの開発 電導性ポリマーは合成時にイオン性物質(通常陰イオン)を取り込むため,アミノ酸を取り込むことができる.このイオンは膜の過酸化により取り出すことが可能である.また,この処理により膜は硬化するので元のアミノ酸の形状を記憶できる.この方法では複雑な合成を経ずして簡単に認識膜が作成できる利点がある.また,クロマトグラフの固定相などマクロ分離法への応用も期待できる.このような膜を利用してセンサーを組み立て,その性能を電気化学的に評価した結果,現状でも0.01程度の選択係数が得られる優れたセンサー膜が得られた.
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