研究概要 |
本研究では,フィールドで使用可能な簡易な送液方法を開発し,それを応用した大気中の汚染物質のモニタリングを行うシステムの研究を行ってきた。当初,ラジアル電気浸透ポンプという新しい送液の概念を考案し,検討を行った。これはわずか数Vの低い電圧で電気浸透流を起こしてガスの吸収液を流すものであった。当初うまくいっているように見えたが,実際は気泡の発生で溶液が移動していただけであった。そこで10cm程度のマイクロチャネルやガス透過膜であるシリコーンメンブランチューブに数十Vの電圧を印加してガス吸収液が流れることを確認した。次に吸収液ボトルを一定高さにした重力を利用する手法や,小型のコンプレッサで吸収液ボトルの圧力を制御して一定流量の溶液を制御したりする手法を検討し,これらは非常にうまく動作することができた。そこでこういった送液を利用して種々のガス分析の手法を開発した。ひとつはマイクロキャピラリの先端にマイクロリング電極を作成し,そこに形成される液滴にガスを吸収して計測を行うもので,従来の定電位電解法に比べると極めて速い応答を得ることができた。また,コンプレッサ方式では,チューブ状のガス拡散スクラバーと固体半導体素子の組み合わせによる蛍光検出器によりバックグランドレベルまで測定が可能な非常に高感度なH_2S測定器を開発した。高感度でありながらリアルタイムに計測が可能なのも,脈流のない安定な流速が得られたからである。このシステムはバッテリーで駆動することができ,電源のない屋外で昼夜にわたりフィールド試験を行うことができた。その測定結果は,併設したリボン紙式の測定器とよい相関を示した。しかも時間分解能は本装置の方がはるかに高く,風などで急変する硫化水素濃度をリボン紙式では検出できなかったが,本装置ではすばやくキャッチすることができた。
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