研究概要 |
キャピラリー電気泳動(CE)の検出法に高感度・高選択的検出法である質量分析法(MS)を利用するCE-MSについて,高感度化と光学異性体分離検出への適用について基礎的検討を行った。 課題最終年の本年は,特に中性物質の分離に威力を発揮するミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)によるキラル分離において,新規に合成されたキラル界面活性剤を利用した分離システムについて検討すると共に,MSにおける検出感度の向上を目指してオンライン試料濃縮法を適用したMEKC-MSについて検討した。 1.新たに合成された硫酸N-デカノイル-N-メチルグルカミドナトリウムを擬似固定相としたMEKCにおいて,数種のフェニルチオヒダントイン(PTH)-DL-アミノ酸及びダンシル(Dns)-DL-アミノ酸の光学分割が可能であることが明らかとなった。PTH-及びDns-DL-アミノ酸の双方に不斉識別能を有する界面活性剤の例はほとんど報告されておらず,今後の展開が期待される。 2.MSのイオン化法に大気圧化学イオン化法(APCI)を用いることにより,イオン性界面活性剤を分離溶液に含むMEKCでもMS検出が可能である。ここではMEKC-APCI-MSの高感度化を目指して,オンライン試料濃縮法であるスウィーピングの適用を試みた。試料にはキラルな除草剤成分やフタル酸ジアルキルなどを用いた。酸性条件下でスウィーピングを行うことにより,100〜1000倍程度の濃度検出感度の向上が実現できた。 3.薬剤や生体成分など実試料分析への適用にまでは発展させることはできなかったが,本システムを利用することにより,高感度・高選択的なキラル分離検出が可能であることが明らかとなった。
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