研究概要 |
昨年度はユウロピウム(III)をβ-ジケトンの一つであるピバロイルトリフルオロアセトン(PTA)でクロロホルム,ベンゼン,四塩化炭素,ヘキサンへ抽出した際の抽出種の水和数をカールフィッシャー電量滴定法で決定し、水の溶解度の大きい有機溶媒中の方が水和数が大きくことから、脱水和数と有機溶媒への水の溶解度を考慮して、これらの有機溶媒への抽出データを解析してユウロピウム(III)のPTAキレートのphen(1,10-フェナントロリン)付加錯体の生成定数を再計算すると、有機溶媒の種類によらず、付加錯体生成定数は一定であることを見つけた。そして、従来云われてきた無極性溶媒ほど、協同効果が大きいことの意味を明らかにした(投稿中)。このことは他の溶媒とクロロホルムのphenによるIRスペクトルの変化の比較からも明らかになった(投稿準備中)。本年度はこの説の信頼性を高めるためにさらにユウロピウム(III)キレートの水和数をユウロピウム(III)の蛍光寿命が水分子の配位によって短くなることに着目して決定し、水和数の妥当性を確かめると同時に、付加錯体生成時の熱量変化を測定して、クロロホルムはルイス塩基と水素結合するために付加錯体の生成を阻止する傾向があり、吸熱となるが、他の溶媒中では錯体生成熱は発熱であることを見出した(Anal.Sci.に発表)。また、亜鉛(II)の協同効果抽出に対する溶媒効果もまったく同様に説明できることを示した(分析化学誌に投稿中)。 また、これらに先駆け、ランタノイド(III)のPTAキレートにphenが付加した錯体にはもはや水分子は残っていないことをランタノイド系列のすべての金属に対して確認し発表した(Anal.Chim.Acta)。さらに、ランタノイド系列の代表として反磁性のイットリウム、ランタン、ルテチウムを用い、それらのPTAキレートに同じく二座配位子のphenとビピリジル(bpy)が付加した錯体の生成定数、生成熱、NMRスペクトルの測定結果を総合的に解析して、ランタノイド(III)の協同抽出で起こる抽出種のキャラクタリゼーションを体系化する基礎データを収録した。
|