研究概要 |
アカパンカビにはrecQヘリカーゼファミリーの遺伝子が2つあり、それぞれrecQ1,recQ2と名づけられている。本研究ではrecQ1遺伝子の破壊株を作成し、その表現型を調査した。まず明らかになった事はrecQ1遺伝子は、以前に我々が変異原感受性株として単離していたmus-19遺伝子と同じものであることが明らかになった。mus-19はMMS, EMSやMNNGのようなアルキル化剤、4NQO,カンプトテシン等に感受性を示した。エピスタシスの解析からmus-19は組換え修復系と複製後修復系のどちらの修復系においても機能していることが示唆された。紫外線による突然変異の誘発や相同組換え頻度には影響を与えなかった。recQ1は、遺伝子のサイレンシングに関わる遺伝子qde-3としても報告されているのでmus-19変異株における遺伝子のサイレンシング(クエリング)についても調査したところ、この株ではクエリングはおきなかった。酵母を含む多くの生物でrecQは細胞の寿命に関わっていることが知られているので、mus-19における菌糸先端の生長速度を測定したが、生長の停止や速度の低下は見られなかった。recQ2の働きとの重複が考えられるのでrecQ2遺伝子の破壊を進めている。 一方、先端生長がある時間後、停止する変異株mus-10について解析した。この株はやはりMMS、紫外線等の変異原に感受性を示し、エピスタシス解析では除去修復系のmus-18とのみ相乗的な感受性の増加を示したが、他の変異とは示さなかった。寿命と関係があるとされているテロメアの長さの変化を調べたが変化はみられなかった。突然変異の誘起頻度や組換え率も野生株と変わらない。ミトコンドリアのゲノムの不安定性が寿命に関わっている例が報告されているので、調査したところ異常が見られた。
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