本年度は、シロイヌナズナのアルコール脱水素酵素遺伝子座(Adh)に存在する二型を構成する6つの配列型のうち、最も遺伝的距離の離れたタイプ1と6の配列型について、以下のような研究を行った。1)両タイプに対応するエコタイプLandsberg(Ler)(タイプ1)とCvi-0(タイプ6)を選び、Adhに関してヘテロ接合体を得るために、それぞれのエコタイブを母親とした正逆交配を行った。2)得られたヘテロ接合体と両ホモ接合体の形質を比較するために、3つの異なる温度条件(10、20と30度)において種を蒔き、発芽や開花時期など、また、種子の大きさ、葉の形態、茎長や花の大きさについて観察した。結果としては、種子の大きさや葉の形態について母型の影響が強くに現われ、ヘテロ接合体はホモ接合体よりも、生長速度や開花時期が早く、ヘテロシスを示していると考えられる。このヘテロシスの傾向は30度の温度条件においてより顕著にみられた。3)現在、SAGE(serial analysis of gene expression)法を試みており、今年度中にはこの解析の結果より、発現している全遺伝子のプールの中での、Adhの割合についての情報がえられると計画している。今後の計画としては、ADH活性の測定とAdh mRNAの定量を行うほか、今年度得られたデータに基づいて、SAGE法を適用する発生段階をより限定し、異なった温度条件下で、ホモとヘテロ接合体の遺伝子発現のプロフィールを比較することから、ヘテロシスに関係する遺伝子を特定することを予定している。
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