本年度も、シロイヌナズナのアルコール脱水素酵素遺伝子座において検出されたDNA変異の二型現象(大きく分化した二つの配列型が存在すること)が、他の遺伝子座領域で存在するかどうかを検証するために、新たに茎の伸長に関与するAcl5(Acaulis5)と除草剤耐性に関係するAls(acetolactate synthase)の二つの遺伝子座を選び、集団内変異を解析した。その結果、これら二つの遺伝子領域においても、二型が検出され、この現象がシロイヌナズナ核遺伝子の一般的な現象であることが確認された。両遺伝子座ともに、これまで調べられた遺伝子領域よりも高い変異量(0.01以上の塩基多様度)を持ち、この高い変異レベルは、分化した配列型が遺伝子領域全体にわたって高頻度に存在することによって引き起こされている。両遺伝子領域の変異に対して、さまざま中立性検定のテストを行ったが、中立性からの統計的なずれは検出されなかった。ただ、注目すべき変異パターンとして、Acl5遺伝子座においては、イントロン領域のみが極めて高い変異レベルを示したことがあげられる。これはこれまでの領域では検出されていないが、その原因はこれまでの解析ではあきらかになっていない。また、Als遺伝子領域においては、エクソン領域に単一の変異のピークが存在し、このピークは非同義置換を起こす塩基多型部位を中心として形成されていた。さらに、分化した配列型を別々に解析した場合、このピークは消滅する。このような結果は、その非同義置換部位に超優性などの平衡選択が作用していることを示唆している。しかしながら、シロイヌナズナにおいて検出されたこの部位は、他の植物において除草剤耐性を引き起こすことが報告されている非同義置換部位とは異なっていた。Adh遺伝子発現を定量化する実験に関しては、SAGEなどを試みたが、思うような結果は得られなかった。
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