研究概要 |
プラスミドR64の接合伝達領域は、54kbのDNA領域に49個の遺伝子を含む極めて複雑な遺伝子構成を示している。細・太2種の線毛を産生し、IV型線毛である細線毛の先端に局在するPilVタンパクのC末端部はシャフロンのDNA再編成により7種に変換し、液内接合伝達における受容菌の特異性を決定している―等の特徴を示す。本研究ではR64,Collb-P9,R721およびR621aのInclプラスミドの接合伝達遺伝子群の機能を遺伝生化学的に明らかにするとともに、各遺伝子産物を同定し、細胞内局在性を決定することを目的とした。1)R64の各種pilおよびtra遺伝子をT7プロモーター系で大量発現させ、その産物を精製し、抗体を作成して、産物の細胞内局在性を調べた。pilN産物がセクレチン様構造体を形成すること、pilQ産物がATPase活性を示すことを明らかにした。2)シャフロンに関する研究では、対称性を持つ組換え部位を作成することで、順向き組換え部位間での欠失を検出するとともに、RciタンパクのC末端部の役割を推定した。また各種rfa変異株を受容菌とした液内接合伝達により、PilVタンパクに対する特異的受容体としてのリポ多糖の部分構造を推定した。3)R721のoriTオペロンは、R64のそれと同様にoriT配列とnikAB遺伝子から成り立つ。R721のoriTオペロンの機能を詳細に解析し、R64のoriTオペロンとの比較を行った。4)InclγプラスミドR621aの接合伝達領域の構造を明かにした。R621aのexc遺伝子はR64,Collb-P9のものと比較して大きく異なっていた。
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