1.枯草菌の一種である納豆菌の形質転換系の欠陥はその初期誘導経路にあり、後期コンピテンス遺伝子群はすべて納豆菌にも存在することを明らかにすると共に、納豆菌のmecAもしくはclpC遺伝子の破壊、またはcomK遺伝子の過剰発現により、枯草菌と同程度の形質転換活性を有する納豆菌を創製することに成功した。 2.胞子形成開始期およびコンピテンス誘導系に関与するシグマ因子としてσ^Aとσ^Hが知られている。高温感受性胞子形成欠損変異(rpoD21)およびそのサプレッサー変異(rpoB2)の解析より、これら両シグマ因子がRNAポリメラーゼのコア酵素と結合してホロ酵素を形成する際に競合が見られること、さらにリン酸化されたSpo0A(Spo0A-P)、σ^Aコア酵素の三者複合体形成にコア酵素のβサブユニットが重要な働きをしていることを示唆した。 3.ClpP遺伝子欠損株では、Spo0A-Pを必要とするσ^A依存胞子形成初期遺伝子群の転写が誘導されないが、Spo0A-Pの特異的フォスファターゼであるSpo0Eタンパク質の欠損により上記遺伝子群の転写の回復が認められた。このことにより、ClpPタンパク質が胞子形成開始期にSpo0A-Pの細胞内濃度を間接的に制御していることが示された。
|