哺乳動物のミトコンドリアのゲノム・データの解析により、真獣類の目レベルの系統関係に関して、以下のように多くのことが明らかになった。従来、霊長目、ツパイ目、皮翼目などと共にアーコンタに分類されていた翼手目が、実はアーコンタには属さずに、モグラ、ハリネズミなどの食虫目に近縁であることが明らかになった。また、ハリネズミと外見がそっくりで、同じ食虫目に分類されてきたマダガスカルのヒメハリテンレックが、実はまったく別の長鼻目、海牛目、イワダヌキ目、管歯目などアフリカ起源の動物のグループに属することが明らかになった。これは、似たような環境に生息している動物が似たような形態を有するようになるという、収斂進化の最たる例であり、比較形態学からは予想もできなかった成果である。 真獣類の系統進化に関しては、ネズミ、モルモットなどの齧歯目が単系統のグループでなく、ネズミとモルモットはそれぞれ異なる起源をもつという分子系統学からの主張がある。われわれは、自分たちで開発した方法を用いて分子データを注意深く解析した結果、齧歯目が多系統であるという主張は、不適切な方法や不十分なデータのサンプリングによるものであり、種の十分なサンプリングと適切なモデルに基づいた解析が重要であることを示した。 また、ミトコンドリアのゲノム・データの解析と核遺伝子データの解析とを統合して、羊膜類におけるカメ類の系統学的位置について解析した。その結果、カメ類が羊膜類進化の初期に他の系統から分かれたか、あるいは哺乳類が最初に他の系統から分かれたすぐ後にカメ類が分かれたという従来の考えは棄却された。
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