研究概要 |
ショウジョウバエの発生途中にはタイプが異なる細胞周期がプログラムされている。幼虫細胞は、S期だけを繰り返し倍数化するが、成虫原基細胞は、二倍体細胞がG1,S,G2,Mという通常の4期から成る細胞周期により増殖する。我々が先に分離した、ショウジョウバエのDNA複製の伸長因子RF-Cの欠損変異体では、二倍体の増殖だけが強く抑制され、幼虫細胞の倍数化は正常であった。一方、別の伸長因子PCNAの変異体では、両方が影響を受けた。この事実は、細胞の種類によってDNA複製因子の使われ方が異なることを示唆している。この点を他の複製因子についても検討するため、ショウジョウバエの複製開始因子MCM3、6、7およびDNAポリメラーゼδ、ε遺伝子を単離した。cDNAの一次構造を決定し、さらにそれらの突然変異体の分離をめざして各遺伝子座の細胞遺伝学的マッピングをおこなった。その結果、MCM3、6、7は、各々X染色体4F、6B、第3染色体66E領域に、DNAポリメラーゼδ、εは、各々第3染色体94F6-95F1、71F領域に位置することが明らかとなった。このうちDNAポリメラーゼε遺伝子について集中的に解析をおこなった。この遺伝子のcDNAの塩基配列を決定し全アミノ酸配列(2220アミノ酸)を予想した。さらにP因子トランスポゾンによる挿入突然変異体を単離する目的で、ATGコドンの2.5kb上流にP因子が挿入した系統を得た。上記の新しい複製因子がショウジョウバエの異なるタイプのDNA複製の場で機能するか検討する目的で、MCM3、6、7に対するポリクローナル抗体を作成した。ショウジョウバエの初期胚の抽出液を用いたWestern blot解析において各々105kD、105kD、80kDのバンドが得られ、産物が同定された。
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