亜社会性ハダニであるススキスゴモリハダニには、雄雄間の攻撃性に個体群間変異がみられ、攻撃性の強い個体群ほど、一般のハダニに較べて、体サイズにおける性的2形性の発達弱い。この理由を解明するために、平成11年度は、標本状態によって変化しない雄雌の形質を検討し、体サイズやその他の形質を測る方法を確立した。また、雄-雄間の攻撃性の実体を明らかにするために、野外採集調査を実施し、実験的に測られた雄-雄間の攻撃性が、野外個体群の行動を反映していることを明らかにした。 平成12年度は、雄にみられる攻撃性の異なる2グループについて、両グループの間には明瞭な生殖的隔離があり、亜種あるいは別種として扱うべきであること示した。この結果をふまえて、諸地域で採集した標本をグループ別に分け、それぞれについて"現存雄"および現地で飼育によって得た"潜在雄"を逐次標本として、性選択にかかわる形態の特定を試みた。その結果、攻撃性の強いグループでは雄の第1、2脚が、他の形質に較べて極端に発達しており、それが性選択に強く関わっていることがわかった。さらに、九州や本州で採集の潜在雄の性選択にかかわる形質分布が1山の正規分布を示すのに対して、西表島で採集した潜在雄の当該形質は2山型の分布を示すことがわかった。実験室における交尾成功度と雄・雌のサイズ変異の分析を行った。発育期間における栄養状態を変えることで、ほぼ30%サイズ変動のある雄・雌を作出し、それらの間での交尾成功度を測定した。その結果、すくなくとも24時間の交尾期間では、組合せ間の交尾成功度に有意な差が認められなかった。しかし、通常数分で完了する交尾時間に対して、実験した時間が長すぎ、仮に組み合わせ間で交尾成功に差があったとしても、それが隠された可能性を否定できない。この問題は、雌雄をペアーとする時間を短縮することで、今後さらに追求していく予定である。
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