潜水中のウミスズメ類を材料とし、高い活動下における深部体温の変化パターンをファインスケールで測定した。体内埋め込み型2チャンネルデータロガーを使って、昨年に引きつづき北海道天売島において育雛中のウトウ2個体で、深部体温と潜水行動を1秒毎に連続的に数日間測定し、20m前後の30分程度にわたる連続潜水中に腹腔内温度が4度近く低下するという昨年の結果を確認する結果を得た。このロガーは温度センサーの時定数が悪く、1回毎の潜水中の体温変化は得ることができなかった。そこで、センサーをロガー外部に出して、1秒以内に温度変化に追随する改良型を使い、ノルウエーのスピッツベルゲン島で育雛中のハシブトウミガラス1個体から、同様のデータを得た。その結果、この個体が40m前後の潜水をくり返す間に、平均深部体温が数度低下したのは、ウトウと同様であったが、1回ごとの潜水中は潜るに従い体温が上昇し、最大深度にたっするとゆっくりと低下しはじめ、海面に達すると同時に急に低下するという、予想しなかった結果が得られた。これは、潜水中は羽ばたくので筋肉運動によって体温が上昇するが、底から浮上中はそれほど運動せず、海面で急に血流を回復させた結果、潜水中運動せず冷えていた体部分からの低温血液が流入して深部体温も急に低下する、と解釈される。
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