1999年秋に採取したイタドリ種子を実験室において濾紙上で発芽させ、軽石培地に移植し、異なったチッソ濃度の培養液を与えて栽培した。実生の成長はフジアザミと異なり、地上部優先であった。これによる根の不十分な発達が夏の高い死亡率の原因となると推測された。供給チッソ量と成長量とには強い関係は認められなかった。わずかな量であっても吸収された窒素は体内に蓄積し、維持、利用されると結論した。 フジアザミの自生地である富士山御殿場側斜面の約1600m地点に相対光強度約30%の被陰区を設け、被陰しない個体と生理活性、形態の比較をした。被陰個体の光合成速度は対照より低下したが、被陰区の日中の最高光強度でも飽和しなかった。葉の呼吸速度に対照と有意差はなかった。被陰区の個体の葉は対照に比べ、薄くなったが、その程度は葉面積比(g/cm^2)の低下から予想されるものより小さかった。対照区の葉は同化物質を葉内に蓄えていると推測された。葉の光反射率と吸収率を3つの波長域、400-700nm(PAR域)、710-750nm(FR域)、760-1000nm(NIR域)で測定した。吸収率ではいずれの波長域でも被陰、対照間に違いは見られず、PAR域で85-90%、FR域で27-33%、NIR域で5-10%であった。クロロフィル量、a/b比、全カロテノイド量ともに対照と有意差は認められなかった。葉の窒素含有率は乾燥重量あたりでは被陰葉の方が高かったが、面積あたりにすると対照葉の方が高かった。これらのことから、被陰条件で生育したフジアザミは強光下で生育していた時の特徴を維持していて、弱光環境に適応する様子を示さなかったと結論づけられた。フジアザミは強光環境に適応していて、その形態・機能は弱光環境になってもあまり変化せず、遷移が進行して、より弱光となった環境では生育しにくい植物である。
|