一次遷移初期段階にある火山礫地では、貧栄養、乾燥、高温、強光などの環境要因が植物に強く作用している。富士山南東側斜面の標高1600mから1700mの火山礫地にはイタドリ、フジアザミなど約20種の先駆種が分布している。これら先駆種は発芽段階、実生段階、繁殖段階でそれぞれ環境に適応していて、その適応はさまざまであると考えられる。 火山礫地で実生の生残や成長は土壌水分量や栄養塩量に強く影響される。イタドリとフジアザミの実生を異なった水ポテンシャルの培養液で栽培したところ、フジアザミがより低い水ポテンシャルから吸水可能であった。これはイタドリ実生が火山礫地に点在する植物群落の斜面下部に多く、フジアザミではそのような傾向が見られなかったことと関係づけられる。自生地に出現した実生に少量の固形肥料を与え、貧栄養状態を改善したところ、イタドリもフジアザミも乾重や葉面積が10倍も大きくなった。しかし、秋までの生残率はほとんど改善されなかった。成長と生残率は直接関係していないと考えられた。フジアザミの葉の強光適応を検討するために被陰実験を行った。フジアザミ葉は弱光下でも強光下とほぼ同じ形態、生理機能を有し、弱光環境に適応する能力を捨ててしまったと推測された。環境が厳しくなると植物は有性繁殖から無性繁殖に重点をシフトする。調査地が国立公園内で植物を採取できないので、ロゼットのサイズ変化で有性繁殖のコストと無性繁殖のコストを評価した。
|