3種類の共存するヤドカリ(ホンヤドカリ、ケアシホンヤドカリ、イソヨコバサミ)の貝殻利用を調べる目的で、房総半島小湊の岩礁湖間帯でおこない、隔月で1回大潮干潮時に採集した.ホンヤドカリは比較的上部まで分布するが、ケアシホンヤドカリ、イソヨコバサミは中部〜下部にかけて採集されたが、多少密度のずれはあったが3種の分布は大きく重なっていた.ホンヤドカリはイシダタミガイ(34%)、クボガイ(24%)、スガイ(22%)、コシダカサザエ(6%)、ケアシホンヤドカリはクボガイ(49%)、スガイ(15%)、コシダカサザエ(11%)、バテイラ(8%)などイソヨコバサミではクボガイ(28%)、スガイ(20%)、イソニナ(11%)、イシダタミガイ(6%)などを利用していた。宿貝種数は多い順にイソヨコバサミ、ホンヤドカリ、ケアシホンヤドカリであり、またイソヨコバサミでは他の2種では使われていないオオヘビガイやタカラガイなどの貝殻を利用していた.従って利用貝種は非常に重複してたが、利用頻度にはそれぞれ有意に差があった. またビデオと目視観察により行動を調べた。交尾前にオスがメスを確保する交尾前ガードはホンヤドカリとケアシホンヤドカリで行われていた。この2種では小鉗脚と歩脚を使ってメスの貝殻を前後左右に揺らしたり大鉗脚でメスの鉗脚や歩脚を撫でたりしたのち交尾が行われた。また交尾前ガード中に他のオスが来るとメスの貝殻を持ったままで、大鉗脚や歩脚を使って攻撃、威嚇行動を行なった。イソヨコバサミでは長時間の交尾前ガードは無く、オスメスは対面し、オスが歩脚を使って同様に左右に揺り動かす動作が観察されたが、メスをめぐるオス同士の攻撃行動は見られなかった。種内の貝殻闘争(shell fighting)は全種で見られ、方法はほとんど同じであった。攻撃者(貝殻を交換したいヤドカリ)は自分の貝殻を防衛者(その相手)の貝殻にぶつけたり、攻撃者が防御者の貝殻を歩脚で抱えて揺り動かしたりした。 次年度はこれらの結果をふまえて、種間の行動的、生態的相互作用について調べる予定である。
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