研究概要 |
千葉県の岩礁潮間帯に生息する3種類のヤドカリであるホンヤドカリ,イソヨコバサミ,ケアシホンヤドカリの競争関係について調べた。この3種の生息地は潮間帯において著しく重複しているが、弱い帯状分布パターンも認められ、ホンヤドカリが潮間帯中部、イソヨコバサミがその下、ケアシホンヤドカリは最下部に分布する。資源利用としての貝殻利用パターンをみると、3種類では大きくオーバーラップが認められ、特にクッボガイ、イシダタミ、スガイを高頻度で利用している。3種類の競争力の強さについて実験室で調べた。2種類づつの組をつくり、そこから各種1個体づつをとりだし、片方の種の貝殻は殻口を壊して攻撃性を高め、もう一方の種は何も手を加えなかった。攻撃は儀式化した貝殻闘争をよばれるパターンでおこなわれた。片方の種が一方の種をひっくりかえし、上にのしかかって激しく貝殻をぶつけた。その結果相手が貝殻から出てきて、攻撃者はその貝殻を奪った。実験の結果、壊れた貝殻を背負わせたイソヨコバサミはホンヤドカリから80回の実験で12回(15%)貝殻を奪った。壊れた貝殻を背負わせたケアシホンヤドカリはイソヨコバサミから72回の実験で2回(3%)、壊れた貝殻を背負わせたホンヤドカリはケアシホンヤドカリから132回の実験で20回(15%)、.壊れた貝殻を背負わせたケアシホンヤドカリはホンヤドカリから145回の実験で97回(67%)貝殻を奪った。この結果競争力の強さは強い順に:ケアシホンヤドカリ>イソヨコバサミ>ホンヤドカリとなった。この順序は、潮間帯で下部から上部への生息地の順序を一致し、強い種ほど、下部を占めていることになる。
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