1.Synechocous sp.PCC7942から、熱ショックで一過的に誘導される新規な遺伝子(orf7.5)をクローニングした。orf75遺伝子破壊株を作製し、この遺伝子が高温における生存に必須のものであることを明らかにした。orf7.5遺伝子を遺伝子破壊株のゲノム中性領域に組込むと野生型の表現型に戻るが、orf7.5のコード領域にナンセンス変異を起こしたものでは相補しなかったことから、orf7.5遺伝子の翻訳産物がランソウの熱耐性に関与していることが示唆された。orf7.5遺伝子の破壊によりgroESLオペロンやhtpG遺伝子の熱ショックによる発現が抑制された。これらの結果からorf7.5がgroESLやhtpG遺伝子の正の発現制御に関与することが示唆された。 2.Synechococcus sp.PCC7942のgroESL遺伝子の5'上流調節領域とレポーター遺伝子(lacZ)の転写融合遺伝子は、大腸菌では30℃と42℃で構成的に発現した。ランソウでは、同じ転写融合遺伝子は熱ショック依存的に発現した。これは、ランソウ特有の発現抑制機構が存在することを示唆するものである。ランソウ低分子量Hsp(hspA)遺伝子の転写が大腸菌では構成的に起こるのに対して、その翻訳は30℃で抑制された。この結果は転写後調節を示唆するものである。 3.Syechococcus sp.PCC7942のhtpG遺伝子破壊株を作製し、原核生物では初めて、htpGが高温における生存に必須のものであることを明らかにした。htpG遺伝子破壊株は低温感受性で、生育や光合成の低温順化においてもhtpGが重要であることを明らかにした。低分子量Hspを構成的に大量発現するSynechococcus sp.PCC7942株を構築した。このランソウの高温(50℃)における生存率、光化学系II活性や集光機能の熱安定性が増加した。
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