本研究の目的は、光照射によって発現の低下する核輸送複合体αサブユニット、イネインポーティンα1a(IMPα1a)に特異的に結合するタンパク質を単離することによって、光環境応答に関わる可能性のある新規な核タンパク質を同定することである。実験はほぼ計画どおり行われ、期待通りの成果が得られた。 1.Far Western法によるスクリーニングによって得られたIMPα1a結合タンパク質IABP4の解析 (1)cDNAの全塩基配列決定終了:IABP4 cDNAは推定分子量122Kの新規なタンパク質のコード領域全体を含み、シロイヌナズナにも2番染色体上にホモログが存在することがわかった。IABP4タンパク質は、TPR配列を含むN末端側領域ではマウスのリン酸化核タンパク質TSPとも相同性を示すが、SH2ドメインへの結合に必要なC末端部分では相同性が低く、IABP4がTSPと同じ機能を持つとは考えにくい。ただし、C末端部分には推定核局在化シグナルが見いだされた。 (2)発現様式の解析:RT-PCRにより、黄化芽生えで光照射によって発現が低下することを示す結果が得られた。 (3)IMPα1aとの結合の検証:大腸菌で発現・精製したタンパク質を用いて、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による結合アッセイ法によって、IABP4のC末端部分はIMPα1aと複合体を形成することが確かめられた。 今後はIABP4の核局在性を調べるとともに、遺伝子破壊株や形質転換植物を利用した機能解析が必要である。 2.IMPα1aカラムによるアフィニティークロマトグラフィーにより、イネ黄化葉の抽出液から結合タンパク質の単離・精製を試み、3つの結合タンパク質のN末端アミノ酸配列を解読できた。そのうちproline-rich proteinと相同性を示すものについてはcDNAが得られ、黄化芽ばえで光照射によって発現が低下することが明らかになった。
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