| 研究概要 |
植物の乾燥ストレスの初期における酸化的ストレス誘導機構を解析した。水耕栽培したレタスの根にソルビトールを与え,経時的に葉を採取した。24時間以内に葉を不可逆的に枯れさせる強い水ストレスを与えると,ストレス処理開始後1時間から葉のカタラーゼとスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性が低下した。アスコルビン酸ぺルオキシダーゼ(APX)など他の活性酸素消去酵素活性,および葉緑体電子伝達活性は影響を受けなかった。24時間では葉をしおれさせるが不可逆的な枯死には至らない程度の弱い水ストレスでも葉のSODだけが特異的に失活した。この水ストレスで失活するのは葉緑体のCuZnSODであることをアイソザイム解析から明らかにした。すなわち,葉緑体CuZnSODは水ストレスの特異的初期ターゲットであることが初めて明らかになった。乾燥ストレスに応答する植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)を葉に与えても葉緑体CuZnSODの特異的失活が再現できた。また,このABAの作用は拮抗的なホルモン作用をもつカイネチンによって抑制された。すなわち,SODの失活は乾燥ストレスに応答したABAのシグナル伝達の一部をになっている可能性が示唆された。一方,除草剤パラコートによる葉の酸化的ストレス誘導では葉緑体APXが特異的な初期ターゲットであることをホウレンソウを用いて明らかにした。また,シロイヌナズナの酸化的ストレス応答に関与するP1-ゼータクリスタリンが新規な酸化還元酵素であることを明らかにした。
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