葉緑体内の二酸化炭素濃度の低下は、乾燥ストレスに応答した気孔の閉鎖により頻繁に生じる。このような状況下で光エネルギーを受容することは、過剰なエネルギーが活性酸素の生成につながり、大変危険である。植物は、様々な仕組みで低二酸化炭素濃度下での過剰光エネルギー受容による光障害を回避している。研究期間前半では、我々の開発したクロロフィル蛍光イメージング系を応用し、低二酸化炭素濃度下で過剰エネルギーを熱として捨てる反応(熱散逸)を誘導できないシロイヌナズナ変異株を選抜する系を確立した。これにより、光化学系IIの熱散逸誘導装置に異常を持つnpq2、npq4のアレルを得た。これにより、低二酸化炭素濃度下で、光化学系IIでの熱散逸が重要な機能を果たすことが明らかになった。 研究期間後半では、強光下で熱散逸を誘導できない変異株pgr5を単離し、この変異株が低二酸化炭素濃度下での熱散逸誘導能をすべて欠くことを明らかにした。pgr5で欠陥があったのは、光化学系I循環的電子伝達で、長いこと未知であったこの電子伝達の機能が明らかになった。またこの電子伝達に機能する遺伝子PGR5が、初めて明らかになった。
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