光合成の電子伝達系で機能する光化学系1複合体は、膜タンパクを含む10以上のサブユニットと100以上のコファクターから構成される超分子複合体である。各構成成分が機能的な複合体へアセンブリーされる過程は明らかにされておらず、その反応を介添えする装置は同定されていない。我々はすでに葉緑体ゲノム上の機能不明な読み取り枠の一つycf4が光化学系1複合体のアセンブリーに必須な因子をコードすることを明らかにした。このYcf4タンパクに対する抗体を用いた解析の結果、Ycf4は新たに合成された光化学系1複合体と一過性的に結合し、さらにYcf4も大きな複合体を形成していることが明らかにされた。このYcf4複合体は光化学系1複合体のアセンブリー装置であると考えられるので、これをショ糖密度勾配超遠心法、イオン交換カラムクロマトグラフィー法、およびゲルろ過カラムクロマトグラフィー法を利用して精製した。精製度はまだ不十分で他のタンパクの混入が認められるが、この複合体のサイズは分子量180万であることを決定した。さらにYcf4複合体を精製するために、緑藻クラミドモナスの葉緑体形質転換系を利用してYcf4にタグを融合し、アフィニティークロマトグラフィーで複合体をさらに高度に精製することを試みた。異なる原理により生成したYcf4複合体の構成サブユニットを解析した結果、10以上のポリペプチドが存在することが初めて明らかにされた。 この研究と関連して、もう一つの光化学系2複合体の酸素発生系のマンガンクラスターのアセンブリーを部分的に阻害する反応中心タンパクD1のアミノ酸を置換した形質転換体の解析を進めている。その結果、D1のC末端領域の構造がマンガンクラスターの機能に重要であることを確かめた。
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