研究概要 |
植物の光形態形成の受容色素蛋白質フィトクロムは光を吸収すると赤色光吸収型Prと近赤外光吸収型Pfrの間を可逆的に光変換する。生理的にはPfrが活性型と考えられ種々の形態形成反応を誘導している。本研究ではフィトクロムの光変換に伴う構造変化を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。エンドウから精製したフィトクロムAをそのままマイカの劈開面に乗せ生乾きのまま観察すると,球形と雪だるま型の像が得られたが,像の安定性は良くなく,プローブの位置検出に用いている赤色光のレーザーの影響ではないかと思われた。そこで,Pr,Pfrの像をより安定な条件で詳細に見るために,なるべく低濃度のグルタルアルデヒド(GA)で固定して見ることにした。0.1〜0.2%のGA固定した試料では,Prでは厚い球形型,Pfrでは大部分を占める薄い雪だるま型の像に加えて少数の厚い球形の像が主に観察された。すなわち,厚い球のPrは実は2つの半球が重なったもので,Prが光を吸収して構造変換すると2つの半球が開いて雪だるま型に見えると解釈される。フィトクロムはホモダイマーで,各モノマーは色素団を含むN末端側半分と色素団を含まないC末端側半分のドメインとがヒンジ領域でつながっている構造を取ることが分かっている。Pfrの形であると思われる雪だるまのどの部分が,どのドメインに対応するかを,色素団ドメインの既知の領域に結合することが知られている単クローン性抗体を使って現在検定している。
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