1.光化学系I反応中心に結合している反応中心クロロフィル(一方の電子伝達鎖にあるAまたはA_0)が除去された反応中心を作製し、このような不完全な反応中心を用いて電子の流れをピコ秒分光法で調べた。その結果、P700とA_0の間の電荷分離は室温では正常な光化学系I反応中心と同じであったが、100K以下の低温では約半分のP700とA_0の間でしか電荷分離が起こらなかった。この結果から、AまたはA_0がない電子伝達経路では電荷分離が熱緩和過程を含むようになるため低温では電子が移動できなくなると解釈された。 2.クロロフィルの中心金属はMgである。最近ある種の光合成細菌ではMgの代わりにZnを持ったクロロフィルが存在し、光合成を行い得ることが見出された。そこで、緑藻(クロレラ)を亜鉛高濃度下で培養すれば、Zn-クロロフィルを持った人工的光化学系が形成されるのではないかと考えて実験を行った。通常の光照射培養では培地に含まれる亜鉛濃度が20-60倍でクロレラは死滅する。しかし、暗所・有機栄養下で培養すると2000-8000倍の亜鉛濃度でも生育し得ることが判った。亜鉛高濃度下では生育し始めるまでの期間(lag phase)が亜鉛濃度が高くなるにしたがって著しく延びてゆくが、一旦生育が始まると通常の亜鉛濃度のものと同じ時間で定常状態(stationary phase)に達する。生育と共にクロロフィルの合成も始まるが、合成初期ではかなり異常なCh1が蓄積することが分光学的解析から明らかになり、このクロロフィルがZn-Ch1であるかどうかの分析を現在行っている。
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