クロロフィルa合成系の起原と進化を探るため次ぎの研究項目を行った。 (1)亜鉛バクテリオクロロフィルaを合成する好酸性光合成細菌Acidiphilium rubrumの染色体DNAライブラリーを作製し、バクテリオクロロフィルaを合成する紅色細菌Rhodobacter capsulatusの色素合成遺伝子破壊株の機能的相補により、A.rubrumのクロロフィル類合成遺伝子を数種クローニングした。 (2)16S rRNAの塩基配列に基づく系統関係で、最も初期に現れた光合成生物とされる緑色非硫黄細菌Chloroflexus aurantiacusからクロロフィル類の合成に関与する遺伝子のクローニングを行った。 (3)鉄硫黄型の光化学反応中心を持つ緑色硫黄光合成細菌Chlorobium tepidumからクロロフィル類の合成に関与する遺伝子のクローニングを行った。 (4)研究項目(1)?(3)で得た遺伝子とヘリオバクテリア、シアノバクテリアおよび植物のクロロフィル類合成に関与する遺伝子を集めて、それらの分子系統樹を作製し、クロロフィルaの合成系はバクテリオクロロフィルaの合成系から分岐したことを示した。また、16S rRNAの分子系統関係では紅色細菌は真正細菌の中で最も後になって分岐したとされる。しかし、現存する紅色細菌は最も古いクロロフィル類合成酵素系を受け継いでいる可能性が示された。また、シアノバクテリアや植物のクロロフィル合成系はグラム陽性菌に属する光合成細菌ヘリオバクテリアのバクテリオクロロフィルg合成系と非常に近縁であることが示された。
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