研究概要 |
子宮内膜は,単層の上皮細胞と多層の間質細胞で構成されている.この上皮細胞と間質細胞の相互作用を解析するために3次元培養系の構築をした.3週齢の雌マウス子宮より内膜上皮細胞と間質細胞をそれぞれ単離採取した.間質細胞をラット尾腱より調製したコラーゲンゲル中に播いた.さらにその上層に上皮細胞を播いた.培養は,dextran-coated charocoal処理した牛胎児血清(2%)を含むDulbecco'sのEagele改変培地とHamのF-12培地の1:1混合培地で行った. 上皮細胞は,扁平な単層の上皮構造をとり,間質細胞は多層構造をとっていた.走査電顕観察により上皮細胞には微絨毛が観察され,透過電顕観察により上皮細胞間には接着複合体が観察された.なお,5日間の培養では基底膜様の構造の形成は認められなかった.Bromodeoxyuridine投与によりDNA合成を検出した.上皮細胞のDNA合成は,間質細胞との共培養において増加した.また,間質細胞のDNA合成は上皮細胞との共培養によらず,変化はなかった.Estradiol-17β投与により上皮細胞のDNA合成は,単独培養において増加したが,間質細胞との共培養においては顕著な効果が認められなかった.以上の結果より,間質細胞層は上皮細胞の増殖促進効果を持つことが示唆された.また,Estradiol-17βは上皮細胞に直接作用して細胞増殖を促進することが示された.間質細胞には,上皮成長因子,Transforming growth factor αやインスリン様成長因子Iが発現し,それぞれの受容体は上皮に発現していることをNorthern分析により明らかにした.間質細胞では,Estradiol-17βはTransforming growth factor αやインスリン様成長因子Iの発現を促進したが,これらが生理的な増殖因子であるかは不明である.本研究において,3次元的なマウス子宮内膜の機能的再構築が可能となり,間質細胞による上皮細胞への作用の存在が示された.
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