研究概要 |
真核微生物である分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの細胞壁形成機構について分子解剖学的な研究を行い、以下の成果を得た。 1)S. pombe細胞壁からManners&Mayer(1974)およびBrown(1994)の方法に従って、α-1,3-、β-1,3-、β-1,6-グルカンを精製し、NMRにより物理化学的性状を解析した。得られたグルカンは可溶性物質でないため、低分子化しBSAと結合させた後、抗体作製を試みた。 2)既存の抗グルカン抗体を用いて、β-グルカンの局在を解析した結果、β-1,6分岐型β-1,3-グルカンはマンナン層と細胞膜との間と隔壁に、β-1,6-グルカンは細胞壁全体に、および、隔壁では細胞膜隣接部位に局在した。直鎖のβ-1,3-グルカンは隔壁の中央に直線的に局在し、隔壁形成過程では中心的な働きをした。また、アクチン細胞骨格が細胞膜の陥入の先端や、形成過程の隔壁の先端、また、陥入部の基部に局在し、細胞壁(隔壁)形成への関与が示唆された。 3)プロトプラスト再生系を用いて、アクチン細胞骨格の局在を共焦点レーザー走査顕微鏡で検討した結果、ケーブル、パッチの三次元的な局在と細胞壁形成への関与が明らかになった。また、細胞壁形成に対するアクチン結合タンパク(トロポミオシンやArp3)の関与について検討した。 4)S. pombe野生株およびアクチン点変異株cps8から単離した細胞膜を酵素源とし、UDP-グルコースを基質として、cell free系におけるグルカン生合成を行い、グルカン・ネットワークの形成を検討した結果、アクチンを介したシグナル伝達系が必須であると示唆された。
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