研究概要 |
エクジステロイド脱リン酸化酵素は,エクジステロイドのリン酸抱合体を基質として遊離型エクジステロイドの生成を触媒する酵素である.この酵素は数あるステロイドホルモンの中でもリン酸抱合体を形成するエクジステロイドのみで見いだされたユニークな酵素である.しかし,この酵素の酵素化学的な性質についてはほとんど解明されていない.そこで,本年度の研究は,脱リン酸化酵素を精製し,基質特異性などの性状やキネテックスを明らかにすることを目的として行われた.本酵素は,カイコ卵の非休眠卵を材料として陰イオン交換,ゲルろ過,疎水クロマトグラフィーなどにより,電気泳動的にほぼ単一のバンドまで精製できた.しかし,まだ多少の來雑物を含んでいるため,さらに精製を進める予定である.本酵素は可溶性画分に存在し,リソソーム型のホスファターゼやタンパク質ホスファターゼのインヒビターでは抑制されないことから,新規の酵素であることが示唆された.この酵素の精製の途中で,基質であるエクジステロイドリン酸抱合体は,生体内では卵黄タンパク質の一種ピテリンと複合体を形成しており,このビテリン-エクジステロイドリン酸抱合体複合体は,エクジステロイド脱リン酸化酵素によって脱リン酸化されないことが明らかとなった.このことから,生体内でリン酸抱合体から遊離型エクジステロイドが生成されるためには,まずエクジステロイドリン酸抱合体がビテリンから遊離するプロセス(おそらくタンパク分解酵素によってビテリンが分解される)が必要であると推定された.
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