本年度は2年間の課題研究の初年度で、魚類卵成熟誘起ステロイドホルモン細胞膜受容体の遺伝子クローニングの為の、受容体蛋白質の単離精製の段階にあたる。約10kgの成熟キンギョ卵巣より可溶化した約3gの細胞膜画分蛋白質を、Q-Sepharose陰イオン交換クロマト及びSephacrylS300HRゲルろ過クロマトを経て約50mg程度の活性画分を得たが、ここまでの段階で収量の大幅な低下により、当初予定していた続く3段階のクロマトの遂行が困難と判断した。そこで、クロマトの高効率化を目指して、従来より検討していたステロイドホルモン結合アフィニティクロマト法の確立を目指した。BIAcore生体分子相互作用解析装置(ファルマシア社)を用いて、受容体との結合能を維持しつつ化学修飾できる部位を検討し、ステロイド骨格中C3位のケト基をカルボキシメチルオキシム化できる事を見出した。これを基に分取スケールの成熟誘起ホルモン結合Sepharoseカラム(100m1)を作成した。細胞膜可溶化画分を直接の試料とした場合、ホルモン結合活性は0.15M NaC1含有緩衝液によりカラムに結合し、0.15-1M NaCl濃度勾配で溶出し90%以上の來雑蛋白質を除去できた。作成したアフィニティカラムは非常に精製効率の高いカラムであることが期待される。今後、既に部分精製して得ていた50mgの活性画分を、ホルモン結合Sepharoseカラム、Phenyl Superoseカラムを経て精製度を上げた後、得られた最終画分を2次元電気泳動法により分離し個々の蛋白質スポットの部分アミノ酸配列を決定し、RT-PCR法による遺伝子クローニングを行う。
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