研究概要 |
平成11年度に得られた成績を基に、8.4kgのキンギョ卵巣(800匹)から精製を開始し、S-300HR(ゲルろ過)、Q-Sepharose FF及びPoros HQ(イオン交換)、Phenyl Superose(疎水性相互作用)のクロマトグラフィを行うと共に、新たな精製法の検討も行った。もともとホルモンと受容体の親和性が弱い為に強い保持力は得られなかったが、リガンドである17α,20β-DPを大量に固定化した大型カラムを用いたgel retardation(遅延クロマト)法の導入により精製度を上げることが出来た。得られた最終画分には198,110,93,67,41KDaの5本のバンドが確認できた。この内93,67のバンドは他に比べ含量もやや多く、11年度に確認していたバンドと同一のものと考えられた。これらのバンドをゲル内トリプシン消化後、生成ペプチド断片のmicro sequenceを試み、僅かに、93KDaからIT(P)H(L)PDF、67KDaからE(T)V(D)EL(Y)AXLFの配列が得られたが、Genbank databaseからは興味ある遺伝子との相同性を見出せなかった。有意のアミノ酸配列情報が得られなかったのは、最終的に得られた標品が配列解析のために僅かに少なかったことが原因である。現在、2倍強である19kgの材料の用意を行っている。 魚類卵表層画分中の有用成分の解析 卵成熟誘起ホルモン細胞膜受容体と同様に卵表層画分に存在し、卵成熟期及びその前後の時期に重要な働きを行う成分の同定を行った。メダカ卵の表層胞内容物中から受精時の卵膜硬化現象(受精膜形成)を特異的に誘起する活性成分を精製単離しalveolinと命名した。c DNAクローニングを行い構造解析の結果、876bp、アミノ酸265残基からなるメタロプロテアーゼであった。Alveolinは特定の卵膜成分の限定分解を行うことで、卵膜硬化の一連の過程を誘起することを明らかにした。
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