研究概要 |
発育阻害ペプチド(Growth-blockingpeptide,GBP)は、昆虫の発育を調節する生理活性ペプチドとして同定された。最近の研究により、GBPは、分子量約1.5KDaの前駆体の形で合成されプロセッシングを受けて活性化することが明らかになっている。今年度は、この活性化に関与するプロセッシング酵素の精製を試みた。GBPは、主に、脂肪体と神経組織で合成されることが分かっているので脂肪体を精製の出発材料とした。脂肪体抽出物質からPhenyl-Toyopearl疎水クロマトカラム,Superose12ゲルろ過カラム,HiTrapQイオン交換カラム、最後に、Superdex75ゲルろ過カラムという全部で4段階のクロマトグラフィーによって精製を完了した。精製されたプロセッシング酵素の分子量は、約58KDaと計算された。精製されたこの酵素が、間違いなくGBP前駆体プロセッシングに関わっていることは、前駆体GBPと反応させることによってGBPのアミノ末端アミノ酸の前で限定加水分解が起ることから証明した。また、各種合成ペプチドを基質に用いてその特異性を調べたところ、哺乳動物の血球凝集反応活性化に関与するファクター10に似たセリン型プロテアーゼであることが明らかになった。昆虫においては血球凝集反応系の解析が進んでいないこともあり、この点は特に興味深い結果である。現在、このタンパク質一次構造を決定すべく、上記精製過程のスケールアップを試みている段階であり、少なくとも1ヶ月以内にアミノ末端20残基程度のアミノ酸配列は決定できるものと確信している。
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